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緊急事態宣言をきっかけに繋がり、未だ会えていない長崎の高校生との164日の及ぶMV制作

の続き。


きっかけは緊急事態宣言。 2020年4月6日、私がボーカルをつとめるユニット「オノマトペル」では、今後定期的にonomatopel Youtube Channnelに動画をアップすべく、スタジオ環境を整えていた。 そんな矢先の「外出自粛」事態。ライブが当分できないばかりか、ピアニストの工藤拓人とたった2人のユニットですら、スタジオで動画を撮ったり、会ったりすることはしばらくできないのかも。 せっかくこの数年で、全国にライブに行く繋がりができて、私個人でも年間150本以上の弾き語りライブをできるようになったのに。年に2回は会いに行けるホームのような場所ができたのにな。としょんぼりした。


各地でつながったカフェやレストラン、古民家を改造したいろんな施設や美術館、バーの人たちが、営業を禁止されたわけではないが集客もできないという苦しい状況をSNSなどに投稿していた。


そのうちの一つが、長崎県諫早市のカフェ&バーnobiyaを経営する、サックスプレイヤー、田中ノビ氏だった。


nobiyaは営業停止要請はないものの、連日コロナの影響で客足は遠のき、私がかつてライブさせていただいたあとに導入したピアノや沢山の楽器たちに囲まれ、ノビさんがアップする「サックス演奏動画」が粛々と投稿されていた。


去年nobiyaでライブさせていただき、私がギターで弾き語りをした際に、ノビさんが即興で絵をかいてくれ、その絵が素晴らしく、たまにアップされるお店の宣伝に添えられた絵などもいつも楽しみにしていた。


ノビさんの絵のタッチなら、オノマトペルの楽曲のキャラクターを書いてもらったりしたらすごく合いそうだ....。もしかして今なら、少し時間にもゆとりができて一緒に物づくりができたりするかもしれない..。

そう思い、ノビさんに連絡をとってみた。


ノビさんは話をきくやいなや「それなら、僕の息子はどうだろう、絵の才能があるんだ」と、高校三年生の田中響くん(17才)を紹介してくれた。お誕生日を迎え、現在18才。

田中響くんのインスタグラムを拝見し、ユーモアもセンスも技術も兼ね備えた絵がすっかり大好きになった私は、ノビさんに趣旨を相談し、田中響くんをお誘いすることにした。


5/17。私と田中響くん、そしてLINE通話の後ろからちょこちょこ発言をしてくる妹さんも登場する、雑談を交えた打ち合わせが始まった。


響くんのインスタや、パラパラ漫画として紙に書いたものを動画に仕上げたものを拝見した。2人で、pinterestやYoutubeで好きな動画を送り合い、響くんや自分が好きなものを把握していった。

今は絵を描いているが、動画作りに興味があることや、長谷川等伯などの日本画にも興味があること。大好きなアニメの絵は毎日かいていること...。


2人で、動画に挑戦できるね、となってからは、オノマトペルの新曲と、曲のコンセプトなどをいくつか響くんにきいてもらった。


なにしろオノマトペルの曲、実はほとんど人間が主人公ではないのだ。化け猫や笠地蔵、電極、神木、水や、人間ではないばかりか概念や形のないもの、妄想の世界。


その中で彼が選んでくれたのは「どんぐり山の天下」。

宮澤賢治の「どんぐりと山猫」の物語へのオマージュ作品である。


響くんがさらさらと書いてくれたどんぐりのキャラクターは私じゃ絶対に描けない、想像もできない、なんともクセになる、愛嬌のある「やつら」だった。


響くんに、青空文庫の「どんぐりと山猫」のリンクを送り、読んでもらってからは

楽曲の歌詞の意図などを聞いてもらいつつ、2人して絵コンテを描いてみた。


ここまでのうちあわせに、お父さん一切関与・監修してこない。

さすがだなぁ、バーを営むサックスプレイヤーにしてイラストレーターの、田中ノビさん。 一度だけ、響くんへのお礼や、未成年なのでメディアでの露出ついて相談をした。

「どんどん出して欲しい」とノビさん。もう大人なので、僕を介さなくても大丈夫。

謝礼に関しては、画材などはどうだろうか、と提案してくれた。

そして、来年は東京に行くかもしれない。東京にいったらいろんな人との出会いも大切になると思う。そういう繋がりが生まれることも、響にとって、いいんではないかと思う。


そんな趣旨のことを話してくれた。 こんなカッコいいお父さんの発言、きっと響くんはまだ知らない。


でも、まだあったこともない東京の見知らぬミュージシャンからの誘いに、すぐ応じてくれ、物怖じすることもなく日々ライン打ち合わせをできる高校三年生になっていることは、

きっと響くんをとりまく大人たちの影響なんだろうな。


さて。しかし。 私はミュージシャンで、絵や動画編集はするものの、本気のアニメーション...はどうやって作るのが良いだろうか。

今からソフトを導入して、デジタルで仕上げるべきか。そのほうが多少、

全てペンに手書きよりは時間と費用は大変だと思うが、私にそこまでの知識がない...。


ここで、アーティスト、Little Woodyさんを召喚した。 映像作家でありデザイナー、写真撮影から絵や粘土などの立体作品制作...、さらにはウッドベースとして2つ以上のバンドにも参加してフェスなどにも出演する、物づくりの権化のような人である。 監修で入ってくれないかと頼んでみた。


Woodyさんを交えた三人での「うちあわせ」LINEグループでの頻繁なやりとりが始まった。


おれ「監修」じゃなくて「アドバイザー」的な立場がいいよ。


Woodyさんが言う。


パラパラ漫画を作るっていうことは、本当に手間と労力がかかるんだ。デザイナーとして、仕事としてやっていく中で、いずれ効率重視をしたり、いろんな技術も覚えていくと思う。でも、いま、高校生だからできることっていうのもあると思うから、慣れている筆と紙で、全部自分でやってみるのがいいんじゃないかな。 そしてその何百枚ものリアルな紙が、手元に残るんだ。 すごくエネルギーがこもった作品が残るんだ...。


ローラも、今回の作品はほとんど直せない、やり直しができないと思った方がいい。



いろんなメディアでは登場しない、この「裏方」の大人に徹したWoodyさんの一言があり、響くんは独自のセンスで、絵コンテを書き、毎日インスタグラムに今日の絵(パラパラ動画)を欠かさずアップするという日々が始まった。


山猫がまさか羽織袴で登場するとは。笑


どんぐりが袴をはく位置はそこなんだ!


なんだこのドヤ顔のどんぐりは!


そして嬉しいことに、響くんはこの作品を、彼の通う長崎日大高校デザイン美術科の卒業制作として展示したいと言ってくれた。 最初に依頼したときは知らなかったことだが、響くんは画家なのかと思っていたら、映像に進みたいということも知った。


私たちオノマトペルのほうも粛々と遠隔レコーディングを重ね、デモ音源が1パートずつ「生演奏」にさしかわっていった。

インスタグラムは止まることなく、驚きの連続だった。



細部にまでこだわりと、「ニヤリ」とさせるユーモアをちりばめ、作品はどんどん進んでいった。


いよいよ線画が完成したころ、再度「うちあわせ」LINEで通話をした。

色は、どうしようか。


絵の具などで塗るのか。それともデジタルにするのか。




ここからはデジタルでの色つけ、そして編集も響くん自らアプリでやることになった。


オノマトペルからは、薄型のスキャナーと、最新のiPad AirとApple Penを贈った。

本当はサプライズにしたかったけれど...色の好みを聞いたからバレちゃった。


Woodyさんから連絡が来た。

「実はもう三人ラインじゃなくて2人ですごいやりとりしてるよ。



最後の仕上げぐらい、俺がやるかなと思ったけど、響くんすごくこだわりがあって、

なにしろ編集まで全部やっていったよ」





楽曲の最後のシーンだけ、要望...。お願いをした。

今回、初のフルアニメーションに挑戦している響くんだけれど、日本画から影響を受けた、時間をかけた1枚絵の素晴らしさを、最後のクライマックスのシーンに使いたい。


やれ、俺のほうがまるいから偉いんだ、俺はとんがっているからすごいんだ、いやいや背の高さだ、違う違う押しっこの強いやつだ...と裁判をしていたどんぐりたちが、

「げにあはれなり」と一喝され、

「その丸さ、とんがり、背の高さなどを活かし、こんなところに集まって争っていないでそれぞれ散りて、それぞれの芽を出し、枝を伸ばし、幹を太らせ、山となれ」

と言われて、


場面展開があり、静寂を迎えて山が現れる...。


見事だった。インスタグラムに乗っているのはこの大きな1枚絵のほんの一部。 11/28日から四日間行われた卒業制作展で展示されているのを本当に一目みたかった。


こうして、作品は完成した。全体を見ると、絵コンテにはなかったシーンがたくさん追加されていた。

ホーンセクション、本当は2人だけど大勢いる!

それどころか、カメルーンの笛吹ぐらいの大人数で行進している!

ピアニストがいつのまにか、スティービーワンダー! 変な踊り...、チャップリンの動きをするどんぐり! クォート(引用)が..だいたい響くんの世代よりはるか昔のものなところが、渋い..。そしてちゃんと、ホーンセクションのリーダーにはアフロヘアのお父さん、田中ノビ氏が登場している..!!!



11/28(水)。

「どんぐり山の天下」の楽曲とミュージックビデオは無事リリースされ、

長崎新聞から響くんの取材をしていただいたり、長崎FMで響くんの話題と共にかけてもらったり、ヤフーニュースに載ったり、



嬉しいことに配信した楽曲は、Spotifyの公式プレイリスト、「Woman's Voice」にピックアップされたりした。

手嶋葵さん、ハンバートハンバートやKitri、松任谷由美さんたちの新曲たちに混じって、

響くんのどんぐりジャケット写真が誇らしげに鎮座してる。

楽曲もMVもこちらから聴けます。 https://lnk.ffm.to/dongri

長崎出身のSSR上奥まいこちゃん、諫早市のSSW古賀了さん、そして長崎市内のフォーク酒場を営む榎島英己マスター、nobiyaの田中ノビさんをはじめ、いろんな方が繋げて、繋げてくれて、田中響くんとの作品を世に出せたこと、本当に嬉しいです。 長崎新聞さん、長崎FMさん、Spotify。さわさん。Woodyさん、そしてオノマトペルピアニストの工藤、参加してくださったミュージシャンのみなさま、エンジニア向さん、吉川さん。 本当にありがとうございます。 さて。ミュージシャンと曲のブログも書こうかな。

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